■緊急走行できない救急車

傷病者の家族「皆さん、どいてくれないんですね。」

私「そうですね…。」

上記の会話は、実際に救急隊員として、救急業務に従事していた時に傷病者の家族とした会話です。

消防を辞めてから、街を歩いていると救急車が赤色灯を点灯しているのに、サイレンを止めて信号待ちをしている場面に出くわしました。

前方を見ると車が渋滞していて進めない。

私はみんなが少しずつ避けたらこの救急車は進めると思いました。

しかし、一般車両は動きません。

救急車は無理に進むと事故を誘発する可能性があると判断しサイレンを止めます。そして、信号が青に変わり進むとサイレンを鳴らします。消防は安全を最優先に活動します。二次災害は絶対に許されません。搬送中の救急車が事故を起こせば、さらに病着が遅れる可能性があるので、無理な活動はしないという判断になるのです。

救急出場のすべてが一分一秒を争うかと言われたら「違う」と答えます。タクシー代わりの不適切利用もあるからです。しかし、一分一秒が問われる出場もあるのです。

CPA(心肺停止)等の場合は、覚知から出場、現着、現発、病着全て一分一秒争います。

救急車(緊急車両)が優先なのは誰でも知っていると思います。自分が搬送される立場であれば、一刻も早く病院に行きたいと思うはずです。

家族や友人が救急車に乗っていたら道を譲りますよね?

それが赤の他人だとどうでしょうか?

私はもっとこの現状をもっと問題視するべきだと現職の頃から考えていました。

最近では、緊急車両のサイレンもイエルプサイレン、エアロホークなど様々な種類が出てきました。

しかし、一番必要なのは思いやりの精神だと思います。

歩いている時に救急車が来ていたら、直前で急いで横断せずに進路を譲る。車を運転していたらしっかり横に寄り停止するなど、みんなが少しずつ思いやりをもって動けたら、私の見ていた救急車は動けたかもしれません。

■救急車は搬送中に路肩に停止する時がある

救急車は搬送している傷病者の状況によって、路肩で停止して処置を実施している時があります。例えば、CPA(心肺停止)の傷病者に対して、救急救命士はアドレナリン投与のため、静脈路確保(点滴)をする事があります。点滴は現場でやる事もあれば、その時の状況で搬送中にやる事もあります。道路状況が良ければ、走行中に点滴をするための針を刺せますが、凸凹道の場合は家族に状況を説明し、路肩に停止して点滴ルートを確保します。

CPR(心肺蘇生)をしている時は、2分ごとにパルスチェック(呼吸、脈、心電図波形の確認)をします。そしてAED(除細動)が必要が場合は、ショックを実施します。心電図は救急車走行中のノイズを拾います。波形確認の際はその都度停止する事があります。

■救急車はすぐに出発しない

救急車は到着したら、すぐ病院に搬送してもらえる訳ではありません。どんな傷病者であっても、病院に受け入れを依頼する電話をかけて、受け入れOKと返答を得てから搬送します。明らかに重症であれば基本的にすぐ搬送先は決まります。しかし、中等症、軽傷の場合は違います。何件も収容依頼を断られる事もあります。一昔前にはたらい回しという言葉がありました。収容を断られる原因は様々です。ベッド満床、医師不在、過去に病院とトラブルがある人など、本当に様々です。

救急隊は傷病者の症状に応じて搬送先を選定します。希望の搬送先があったとしても、訴えている症状と合致しない時は別の病院を選定します。例えば、脳梗塞疑いの傷病者を小児科の病院に搬送してもしょうがないですよね?救急隊は、その日の救急当番病院や直近救命センターを選定し、収容依頼をかけて収容OKが出たら搬送を開始します。

■限られた人、空間、資器材で活動する

救急隊は通常3名編成です。3人それぞれの役割は、隊長、隊員、機関員です。救急救命士が最低一人は乗車する事になっています。救急救命士不在隊は、ほぼ無いと思います。大きな消防本部では、隊長、隊員、機関員の3人が全員救急救命士の隊もあります。地方ではおそらく隊長、隊員、機関員のうち、1~2名が救急救命士の有資格者で活動しています。

救急車の中は広いようで狭いです。限られた空間の中で最善の処置をします。ハイエース、エルグランド、キャラバンをベースにしている車両が多いです。

資器材としては、色々あります。呼吸管理用資器材、外傷キット、吸引機、AED、心電図モニター、ストレッチャー等々。限られた資器材を全て活用して活動をします。血圧計を止血のために、ターニケット代わりにする事もありました。毛布を頸部の保護に使用する事もあります。

■連続出場で食事も休憩もとれない救急隊

以前、救急隊員が病院で飲料を購入して投書されていたことがありました。Twitter、Yahoo!ニュースでも記事になりました。大都市の救急隊員は本当に過酷です。一日のほとんどを救急車内で過ごします。機関員(運転手)の走行距離も長距離になります。救急活動は、常に一定の緊張感を解けません。消防職員は日勤者以外は、基本的に24時間交代なので、当直の間はいつ来るかもわからない指令に耳を傾け、緊張感を維持しています。そんな中で活動している彼らがなぜ飲料、食事を外で買っていけないのでしょうか?公務員だからでしょうか?

公務員も人間です。食事や飲み物を飲まなければ死んでしまいます。救急隊は体力を皆さんが思っている以上に使います。エレベーターの無い建物から布担架で大人一人降ろすのがどれだけ大変かやってみるとわかると思います。私は腹を減らしている救急隊よりも、腹いっぱいの救急隊に来てもらいたいです。栄養が摂れないと集中力も落ちます。

私は消防車で買い物、救急車でコンビニ立ち寄りは良いと思います。消防車・救急車が立ち寄る事で、立ち寄った建物に不備があれば一言、言われると思いますが、それが安全につながる可能性もあります。立ち寄った事で出場は遅れません。むしろ外に出る準備は出来ているので、消防署に居る時よりも、覚知から出場までの時間は早くなります。

堂々と消防車・救急車で買い物が出来る世の中になってほしいです。

■まとめ

長々と書きましたが、私が言いたいのはこれだけです。

「緊急車両に道を譲りましょう。」


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